1990年ごろ、いくつかのメーカーからカーナビゲーション・システムが発売されるようになりました。衛星の数が増えてほぼ24時間の測位が可能になったのです。自動車分野でGPSが爆発的に普及することは容易に想像できることでした。そのため大量生産が前提の半導体GPS受信機ICも現実的になり、いっきに小型化と低コスト化が進む状況が整いました。GN-72は1992年に車載規格を満たした本格的なナビゲーション用受信機です。GPS専用回路である「相関器」を1チップに集積していましたが、CPUやフィルタ、アナログICなどのサイズが大きかったため、どうにかナビ本体に押し込むような状態でした。しかも高価だったため、十分に普及しませんでした。
1990年代の後半、半導体の集積化が急激に進み、次々と部品が統合されていきました。年表をご覧いただくとわかるように、世代が代わるたびにサイズが1/2ずつ小さくなっています。1999年モデルのGN-79は微細化された半導体プロセスで作られたディジタルICを搭載して大幅に小型化されました。このディジタルICはマスクROMとSRAMも集積しています。2001年に登場したGN-80はアナログ部とデジタル部の2チップ構成です。
2000年代に入り、GPS受信機の利用場所の拡大化が進みました。GPS信号はとても微弱な電波のため、屋内はもちろん、屋外であっても、ビルや高架下といった遮蔽環境では測位できないことがあります。そこで登場したのが高感度技術です。屋外で通常受信できる信号レベルの1/1000という微弱な信号をも検出し、上記環境での測位を可能にしました。eRideOPUSシリーズは、高感度技術に加えて、GPS信号が遮蔽される環境でも正確な位置情報を提供できるデッドレコニング機能(※)を搭載し、GPS受信機の利用場所がさらに拡大しました。
(※)デッドレコニング機能
GPS信号に加えて加速度センサーやジャイロセンサーなどの情報も使用し、GPS信号が受信できない環境でも位置を求める機能。自律航法、推測航法とも呼ばれます。
これまでは「測位システムといえばGPS」が一般的でした。本来、衛星を使った測位システムはGNSS(全地球航法衛星システム)と呼ばれます。GPSとはGNSSの中でも米国の測位システムのみを指しますが、実運用の測位システムにはGPSしかなく、GPSという単語が一般に使われていました。 近年では、欧州やロシア、中国といった米国以外の国々が次々と自国版のGNSSを構築しつつあります。欧州:Galileo、ロシア:GLONASS、中国:BeiDou など。日本でも、QZSS(準天頂衛星システム)として2010年に"みちびき"が打ち上げられました。各国がGNSSを構築することで使用できる衛星の総数が増えると、測位性能が向上します。また、各国が自国のインフラのみで位置を使った様々なサービスを提供することができるようになります。eRideOPUS 7シリーズは、これらの衛星すべてに対応した1チップのマルチGNSSチップです。(※)
(※)GLONASSは対応済、GalileoやBeiDouは衛星システムが構築中のため、対応予定