世界一周への挑戦 ダブルハンドヨットレース “GLOBE 40”。夢の達成に向けて日々チャレンジを続けたチームMILAIの記録。世界一周達成おめでとうございます! 世界一周への挑戦 ダブルハンドヨットレース “GLOBE 40”。夢の達成に向けて日々チャレンジを続けたチームMILAIの記録。世界一周達成おめでとうございます!

LEG 5
Papeete~Ushaia

レース : 11月26日~12月17日 日数 21
5062海里

第5レグはパペーテからウシュアイアまで走る5062マイルのロングコースです。気象条件が厳しい「船乗りの墓場」と言われるホーン岬を超え、南アメリカ大陸の最南端にあるウシュアイア(アルゼンチン)を目指します。

2022年12月7日
第5レグもトップフィニッシュ!南アメリカ大陸の最南端に到着(第1話)


フランス人セーラーの、エステルさん(右)と共に走ります


タヒチをゆったりとした風でスタート


スタート直後に軽風域に入り、なかなかスピードがでません

タヒチでおよそ2週間。船の整備をしつつ身体もしっかり休め、リフレッシュすることができました。MILAIは万全の状態でセーリングを再開する日を待ちます。
第5レグは帆船乗りの墓場とも言われるホーン岬を回航する、世界一周を達成するための難関が待ち構える過酷で重要なレグとなります。

この第5レグはフランス人セーラーの、エステル・グリックと共に走ります。エステルは2018年に私(鈴木)がフランスで外洋セーリングを始めた時に、外洋セーリングのイロハを私にコーチングしてくれたセーラーです。ミニトランザットやClass40など多くの外洋セーリングを経験しているセーラーで、彼女と今回ホーン岬回航を目指します。

タヒチをゆったりとした風でスタート。その後5日間ほどは風が弱い予報です。トラッキングをご覧の方はお気づきだったかもしれませんが、今回風が弱い中では他艇から時に遅れをとる時もありました。Globe40では9枚のセールを使用することが許されており、各レグでセールの選択を変更できます。私たちは12枚のセールを所持していて、その中から9枚を選ぶカタチです。
第5レグではスタート直後に軽風域があるものの、後半は吹き荒れることが予想されたので、私たちは強風仕様のセールを選択することにしました。そのため軽風域ではなかなかスピードがでません。

軽風域を無事に通過。MILAIは快走し始めます。良いコース選択をすることができ、苦手な軽風でしたがトップを維持しています。とは言えフィニッシュまでは3,000マイル以上あります。後続艇との差を広めることに挑戦しつつ、トラブルを起こさないようにプッシュしすぎず船を走らせます。

2022年12月16日
第5レグもトップフィニッシュ!南アメリカ大陸の最南端に到着(第2話)


セールが壊れて、時には24時間以上2人で交代しながら縫い続けました。



ホーン岬を通過。マイルくんもここまでMILAIと共にここまでよく頑張りました!

南下するにつれて気温が下がってきました。タヒチでは30℃だった気温も、ここでは10℃。ホーン岬では5℃まで気温が下がります。

南下するにつれて気温が下がるだけでなく、風速と波高が増してきました。時に20m/s以上の突風が吹くことはあります。また5m以上の波が後ろから追いかけてくるため、船のスピードは維持して波から逃げ切らなくてはなりません。
そんな中、いくつかのセールが破損してしまいました。レースで勝つため、そして安全に走るためにも壊れたセールを修理し、船速を維持しなくてはなりません。狭い船内で大きなセールを広げて、時には24時間以上2人で交代しながら縫い続けました。

他にも色々と故障が出始めました。大波によってステンレス製のパルピットが大きく曲がったり、オートパイロットの油圧モーターが停止してしまったり、他にも多くの小さなトラブルがありました。応急処置をしたり予備に切り替えてウシュアイアを目指します。

そしてスタートから19日目、12月16日にホーン岬を通過。ホーン岬手前までは風速15m/sほどありましたが、一気に風が落ちてとても穏やかなホーン岬回航となりました。マイルくんもここまでMILAIと共にここまでよく頑張りました!ホーン岬を回ったら、ウシュアイアのフィニッシュに向けてラストスパートです。

2022年12月19日
第5レグもトップフィニッシュ!南アメリカ大陸の最南端に到着(第3話)


まだ雪が残る海峡の両側の山々


12月17日、ウシュアイアに到着

ウシュアイアは外海からビーグル海峡をおよそ70マイル入ったところに位置しています。海峡の両側の山々にはまだ雪が残り、冷たい風が吹き付けます。また両脇の山に風が凝縮され、25m/s以上の風が吹き、その中を向かい風でタックを繰り返しながら走るのは、なかなか大変なセーリングでした。それでも大自然に囲まれたこういうセーリングは初めてなので、とても新鮮なセーリングです。

12月17日、タヒチをスタートしてから20日でウシュアイアに到着。レース委員会や地元の方々、そして私たちと同じように世界を旅しているセーラーたちに温かな歓迎を受けてウシュアイアにフィニッシュしました。
レース日数は20日間とそれほど長いセーリングではありませんでしたが、南緯16度のタヒチから56度のホーン岬に南下するにつれて、気温が下がるだけでなく、風の強さや重さ、そして波の形が日々変わっていくことを感じました。同じ風速や波高でも、エネルギーの違いがこんなにも大きいことに本当に驚きました。
セールやオートパイロットなど故障も多かった第5レグ。「世界一周とは」をたくさん経験することができたセーリングとなりました。

年末年始をウシュアイアで過ごし、1月8日に第6レグ次はブラジルのレシフェに向けてスタートします。次のレグもエステルと走ります。