レース : 1月5日~1月22日 日数 17
3595海里
ウシュアイアからブラジルのレシフェまでを走る3,595マイルのレグです。天気が刻々と変わる海域を走り続けるので、かなり難しいレグとなる見込みです。
とても穏やかな日に、第6レグが始まりました
アルバトロスは飛んでいます。もう少し北上すると彼らの生息地から出てしまうので、最後の見納めですね。
突然の衝撃で損傷が発生しました。近い港に緊急入港することを決定。
無事に陸に戻れたことでエステル(右)と共にまずはホッとすることができました
新年をウシュアイア(アルゼンチン)で迎え、1月8日にGlobe40のフリートは一路ブラジルのレシフェに向けてスタートしました。レシフェまでは約3,500マイル、17日間ほどのセーリングとなります。
スタート地のウシュアイアはビーグル海峡の中の中間に位置しており、まず外洋に出るためには70マイルほど海峡の中をセーリングで走ります。
ビーグル海峡から出て北上を開始します。フォークランド諸島の周辺ではたくさんの漁船が漁をしていました。
この辺りはイカ漁が特に盛んらしく、漁船のライトは20マイル先からでも目視できます。
外洋はまだ寒いですが、ケープホーン周辺のように刺すような寒さではありません。風も安定しており、気持ち良いセーリングです。フリートのトップを快走しています。
突然の出来事。1月12日 9:00AMに大きな衝撃と音がMILAIを襲いました。当時私(鈴木)はオフで寝ていましたが、衝撃と共に飛び起きました。クルーのエステルはナビゲーションスペースで、PCで作業をしていました。起き上がると同時に、船内にガラスファイバーを削ったときに出る独特の匂いが充満しており、瞬時に大きな破損があることが感じ取れました。
まずはセールを下し低速を緩めて船の安全を確保してから、事故の状況を確認することに。写真では伝わりにくい部分もありますが、損傷は大きくブラジルまでの残り2,500マイルを走ることは難しいと判断し、近い港に緊急入港することを決定。事故現場から最も近くMILAI号が入港できる場所はマル・デル・プラタとわかり、500マイルありますがゆっくりと時間をかけて向かうことにしました。幸いにも風は追い風で、船に負担をかけることなく向かうことができそうです。
1月16日早朝、事故から4日間かけてマル・デル・プラタに到着しました。この4日間は船をなるべく揺らさないように走られることと、最悪の状況も想定していたため、心身ともに疲れましたが、無事に陸に戻れたことでエステルと共にまずはホッとすることができました。レースから外れてしまったことは本当にショックですが、人と船の無事がまずは第一優先です。
マル・デル・プラタはアルゼンチンで2番目に大きな港町です。大型漁船の造船所が並び、ヨットクラブも3つあり、根強いセーリング文化がある街です。ただMILAIのような大型レース用ヨットを上架する設備はないため、船の損傷チェックからその後の修理について綿密な計画が必要です。
まずは水上でクレーンを使って船を吊り上げ、船底とキールの損傷具合を確認しました。キールの下についている鉛の重りが大きく変形しており、衝撃の大きさを物語っていました。
損傷の状況からして、作業だけでも少なくても3週間、それに向けての準備も含めると1ヶ月間ほどかかる予想です。慣れない土地、異なる言語、そして信頼できる技術者を探すこと。超えなくてはならないハードルはたくさんあります。それでも私たちの目標である、世界一周をなんとしてでも達成したい。チームの意思は変わりありません。私たちはここで諦めずに、マル・デル・プラタでMILAI号を修理し、世界一周達成にむけて前進することにしました。
イタリアからチームメイトのアンドレアが合流し、上架してから修理に向けての計画が徐々に固まり始めます。
アンドレアはイタリア語のほか、フランス語、スペイン語も話せますので、スペイン語を話すアルゼンチンの方々とスムーズに話が進んでいきます。本当に頼もしいです。
1月27日。
修理の段取りが整い、いよいよ本格的に作業が始まりました。マストを倒し、キールを外し、エンジンをも外します。技術者は首都ブエノスアイレスからやってきてくれました。MILAIのようなレース用ヨットのメンテナンス経験を持つメンバーで、焦らずに丁寧な仕事をする彼らをみて、信頼できるメンバーだとすぐに感じ取れました。
2月9日(現在)
作業から2週間ほど経過しています。大きく曲がったキールの形は元通りになり、あとは塗装して仕上げになります。船体の修理は先週まで難航していました。もともと確認していた損傷のほかにも問題箇所が見つかったためです。それでも全ての研磨や準備は終わり、現在は積層作業が進んでいます。
いまの予定では2月18日には出港できると考えています。
Globe40に参加している他艇は、すでにブラジルから次の目的地であるグレナダ(カリブ海)を目指し、現在レースをしています。
残念ながら私たちはレースのスケジュールに追いつくことができないため、修理完了後はアルゼンチンから直接フランスを目指すこととなります。私たちは最後の3レグをリタイアという形になってしまいますが、Globe40のレースルールの基づき、三大岬(喜望峰、ルーイン岬、ホーン岬)を越えてフィニッシュ地のロリアンに戻った場合、レース完走とみなされます。そのため、無事にフランスに戻れれば世界一周を達成するだけでなく、Globe40のフィニッシュとしても認めてもらうことができます。
なんとしてでも、この目標を実現できるように全力で最後まで頑張りたいと思います。この度は沢山の方々に多大なるご迷惑をおかけしましたこと、最後になりましたが深くお詫びいたします。MILAIも私(鈴木)もしっかり準備を整え最後まで走り続けますので、今後とも応援どうぞよろしくお願いいたします。