【桧山=北海道】スルメイカの主力産地の一つである北海道桧山地区で、ソナーを導入する小型イカ釣漁船が増えている。イカの群れを効率的に探索するソナーの活用により、集魚灯を点灯する必要性が低下。イカを「集める」から「見つける」方法への転換で、大きな燃油削減効果を生み出している。燃油価格の上昇や環境問題にも対応した、次世代型の省エネ操業をサポートする舶用機器として、ソナーへの注目が高まる。
実際のソナー画像。自船(中央のマーク)のほぼ12時方向の赤い反応が魚群。(周囲の円は海底)
ソナーとは、船底から海中に超音波を発し、その反射波から魚群の分布、密度を解析して表示する装置。魚群探知機が漁船の真下のみを探索するのに対し、ソナーは周囲360度を広範にわたって探索することができる。
主に日本海側の漁場で行われる、集魚灯でイカを集めて漁獲するイカ釣漁業は、他の漁業と比べ、経費に占める燃油コストが高いという課題を抱える。
しかし、ソナーを活用すると、イカの群れを見つけ、そこに移動して漁獲することができるため、集魚灯を点灯する必要がなくなり、燃油コストを大幅に削減できる。探索にかかる航行コストもカットできる。
桧山地区では従来、集魚灯操業が中心であったため、ソナーの普及度は低かった。しかし約5年前から燃油価格が上昇局面に入り情勢が変化、17年度から国の補助事業を活用し、これまでに小型イカ釣船20隻あまりがソナーを導入した。
「かんどり」のメリットについて語る新川常務
同地区・JFひやま漁協の新川正己常務は「ソナーを導入してから集魚灯を点灯せずにイカを獲る『かんどり』が増え、省エネ化が図られている。地球環境にも寄与している」と話す。
集魚灯を一切使わなくなったわけではなく、ある漁業者は「漁場の状況に応じて、ソナーを活用して『かんどり』をするか、集魚灯操業をするか判断している。しかし、1日おきに『かんどり』をするだけでも、燃油の削減効果は大きい」と話す。この漁業者によると、集魚灯を点灯して操業した場合、1日の燃油使用量は「700リットル前後。多ければ1000リットル」にもなるが、「かんどり」なら、300リットル前後に抑えられるという。
また、集魚灯を使用しないことで、エンジンの回転数が落ち、船体への振動負担が軽減されることによる船体補修費、エンジンメンテナンス費の低減など、維持管理費の圧縮にもつながるという声も聞かれた。
昨年半ばにリットル120円まで高騰した漁船用A重油の価格は、1月現在で70円前後に低下している。
しかし、新川常務は「今後、再び燃油価格が上昇する事態に備え、早くから対策を講じておく必要がある」と、省エネ化推進の重要性を強調する。
省エネ体質への転換は漁船漁業における重大なテーマの一つ。これをサポートするソナーなど高性能テクノロジー機器の役割は、今後一層高まってくるものと予測される。
(桧山の「かんどり」の詳細について23日付けから4回にわたって連載します)