コラム・物流百景
難敵!、国際物流総合展の歩き方

国内最大の物流展示会である、国際物流総合展が、2024年9月10日(火)~13日(金)の4日間、東京ビッグサイトで開催されます。

「国内最大」ということは、すなわち物流に関する情報をもっとも効率良く、しかも大量に収集できるということです。しかも開催は、2年に一度。この機会を逃すと、次は2026年まで待たなければなりません。

ただし、国際物流総合展って、展示ブースを見て回るのが大変なんですよね...

まず、会場が大きいです。
東京ビッグサイトの東ホールすべてが国際物流総合展で使われるのですが、その広さは、縦に約380m、横に約260mあります。この広大な展示場に、今回は3,220(2024/6/12時点)の展示ブースが出展します。

さらに、巷の一般的な展示会と違い、出展者がエリアごとにカテゴライズされていません。
これは、例えば、ひとつの展示ブース(出展者)が、3PL事業、システム紹介、倉庫紹介など、複数の展示を設けていることもあり、致し方ないのかもしれませんが。
来場者としては、「私が見たいのは、フォークリフトだけなんだよね」と思っていたとしても、広大な展示場をひとつひとつ回らざるを得ないことになります。

難敵である、国際物流総合展をどのように攻略するか?
物流ジャーナリストであり、ある意味、「国際物流総合展を見るプロ」である筆者が、国際物流総合展の攻略方法を解説しましょう!

引用元:国際物流総合展2024公式サイト

正攻法で、「見たい展示ブースをあらかじめピックアップする」

正攻法としては、出展者リストにあらかじめ目を通し、「見たい・話を聞きたい」展示ブースをピックアップし、訪問するという方法があります。

とは言え、3,000社以上の出展者すべての情報を確認するのは現実的ではありません。

また一応、国際物流総合展のWebサイトには、出展者を検索、あるいはカテゴリーごとに区分したWebガイドが用意されています。これをうまく活用すれば、「見たい・話を聞きたい」展示ブースをピックアップするのは多少楽になります。

国際物流総合展 Webガイド

「一応」と申し上げたのは、このWebガイド、すべての出展者が登録されているわけではないからです。せっかく出展するのに、なぜかWebガイドに情報掲載をしない出展者も少なからずいます。また、Webガイドにおけるカテゴリー分けは、必ずしも正確ではありません。さらに言えば、ここに書かれた展示ブースの情報を見ても、展示内容がいまいちつかめないケースもあります。

これは、出展者の詳細情報入力を、出展者自身に任せているがゆえの課題です。

他にも、この正攻法には課題があります。
「見たい・話を聞きたい」展示ブースをピックアップするという作業そのものが面倒くさく、手間がかかるというのもあるのですが、一番の課題は、「新たな出会いを期待しにくい」ことです。

下調べで「見たい・話を聞きたい」展示ブースを決めてしまうと、下調べ時にピックアップできなかった展示ブースとの新たな出会いは期待できません。
そのため、下調べでガチガチに訪問する展示ブースを決めてしまうのは、もったいないです。

正攻法の亜流として、少し手間を省く方法もあります。
国際物流総合展では、出展者による講演が行われますが、この講演内容をチェックし、「見たい・話を聞きたい」展示ブースをピックアップするという方法です。

ブース出展に加え、講演まで行うと、当然出展者側としては追加費用が発生します。つまり、講演を行う出展者には、熱意と、「講演を行えば、より見込み客を獲得しやすくなる」という自信と実績があります。
こういった国際物流総合展出展に対する熱量は、総じて展示ブースにも反映されているものです。講演まで聞かずとも、講演者リストを確認し、訪問する展示ブースをピックアップするというのもアリです。

ちなみに、国際物流総合展であえて展示ブース巡りをメインにするのではなく、講演を中心に情報収集を行うという方法もありです。
この方法の良い点は、身体がラクなことです。筆者の場合、国際物流総合展では、一日1万5千歩~2万歩以上歩きます。おそらく、筆者のように取材目的でない一般の来場者でも、一日回れば1万歩前後は要するはずです。
時期的に、まだ暑いですし、国際物流総合展開催中は、休憩する場所を探すのにも苦労します。その点、講演は座って情報収集ができますから。「疲れるのは勘弁...」という方は、この方法もご検討してはいかがでしょうか。

事前準備無しで国際物流総合展を攻略する際の心得

おそらく、下調べなしに国際物流総合展に赴くという方が多いことでしょう。
こういう方にオススメの方法は...

  1. まず展示会場地図を手に入れる。
  2. 地図を片手に会場内を回り、「すごく興味がある展示ブース」(※これを「興味ランクA」とします)は、見つけ次第、訪問します。
  3. 「興味はあるけど後回しでも良い」という展示ブースは、会場地図にチェックを入れておきます。後から時間があれば再訪問しましょう。
    興味の度合いによって、「興味ランクB」「興味ランクC」のようにランク付けしておくと、後で見返すときにラクになります。

ちなみに、興味ランクAのブースが混んでいるとき、あるいは興味深そうなブース内セミナーなどがある場合には、地図にチェックを入れて再訪問します。

ちなみに、筆者はブース担当者が自発的に話しかけてこないブースは、基本的に展示ブースを見るだけで切り上げ、取材を深堀りすることはしません。
これは、自分から来場者に話しかけようとしない担当者に話を聞いても、経験上、良い取材ができないと考えているからです。

展示ブースにいるにもかかわらず、「自分から来場者に話しかけようとしない」理由はいろいろと考えられます。

  • そもそも、担当者が出展内容や出展そのものに熱意を持っていない。
  • 展示内容に対する知識が不足していて、来場者に話しかけられたくない。

後者については、大手物流事業者や、大手システム会社などでありがちです。
こういった大企業の場合、展示会のための頭数集めとして、他部署や新人を応援要員として招集し、ブースに立たせている場合があります。こういう方々から話を聞いても、良い情報が得られるわけがありません。

複数の内容を展示している出展者ブースの攻略法

大きなブースだと、複数の展示が行われていて、どれを見るべきなのかが分かりづらい場合があります。
このようなブースの場合は、まず自分自身が興味がある展示を中心に見るべきでしょう。
筆者のように取材が目的であれば、「どの展示が今回の出展で一番のウリなのか?」を担当者に聞くこともあります。

ただし、訴求内容にスジが通っておらず、展示できる内容を寄せ集めただけ──つまり、コンセプトが明確でない展示ブース──は、筆者の場合、適当に切り上げるようにしています。
こういう展示ブースは、話がペラペラで薄く、有益な情報を得られないことが多いです。

来場者がたくさん集まっている人気ブースの攻略法

いきなり展示ブースに突撃せず、筆者の場合は離れた場所から観察するようにしています。

来場者が群がっていると思ったら、なんのことはない、ノベルティが人気だったり、あるいはその受取方法に一手間をかけているから、人が群がっているように見える、なんてブースもあります。わざわざ来場者にガチャガチャをやらせて、出てきたカプセルの中に入った引換券を確認しながらノベルティグッズを渡すなんてことを行う出展ブースも、最近時々見ます。

理由はともかく、来場者がたくさん集まっている展示ブースの場合、ブース担当者も忙しく、十分に話が聞けないことがあります。遠目から出展内容を俯瞰し、聞きたいポイントを明確にしてから担当者を捕まえるようにすると、結果的に短時間で効率よく情報を引き出すことができます。

ランチ交流のススメ

繰り返しになりますが、国際物流総合展は、国内最大の物流展示会です。これはすなわち、物流関係者が多く集まるということで、普段はなかなか会えない方も来場(あるいは出展)している可能性が高いことになります。

国際物流総合展というせっかくの機会を活かし、普段はなかなか会えない方に、「国際物流総合展へ行きますか? もし良かったら、ランチをご一緒しませんか?」と誘っておくのもオススメです。

ちなみに筆者の場合、SNSで事前(あるいは訪問当日)に「9月◯日、国際物流総合展に行きます。もしご挨拶できる方がいらっしゃったら、ダイレクトメッセージでご連絡ください」に投稿しておくようにしています。

余談ですが、もしランチ交流をするのであれば、東ホール2階にある各レストランよりも、フードコートや、周辺にいくつかあるカフェの方がオススメです。
東ホール2階のレストランは、「とにかく早くご飯を食べたい!」という来場者・出展者でごった返すので、ゆっくりしていると、席が空くのを待っている方々の視線が痛いことがありますから...

メモの残し方

さらに余談です。
国際物流総合展のような、大規模な展示会を訪問した後、「あれ、◯◯という展示をしていた出展者って誰だっけ?」と分からなくなってしまうことがあります。

展示会を回っているときは、覚えているつもりでも、展示会が終わると、せっかく得た情報を忘れてしまうこと、ありがちですよね。

筆者は、このようにして展示会で得た情報をメモしています。

  1. メモに使うのは、Googleドキュメント。
  2. 気になった情報は、音声入力ですぐにメモを取る。
  3. さらに、気になった展示は、写真を撮り、Googleドキュメントに貼り付けておく。

「音声入力ができること」「写真が貼り付けられること」、このふたつの条件を満たせば、GoogleドキュメントでなくともOKです。
また最近では、レコーダーで音声メモを残しておき、後で生成AIにまとめさせるという手法も試していますが、まだ精度はイマイチですね。一見手間がかかるようですが、Googleドキュメントにメモを残していったほうが、結果的に後から振り返るときに分かりやすいです。

ちなみに、筆者はカタログ・パンフレットも積極的にもらいますし、名刺交換もたくさんします。持ち帰ったカタログ・パンフレットは、事務所に戻ってからざっと見返し、不要なものはすぐに捨ててしまいます。

名刺交換については、展示会での交換用名刺を用意しておくと重宝します。
筆者の場合、普段使う名刺から、住所と携帯電話番号の記載を抜いたものを用意しています。こういった名刺を用意しておくと、携帯電話に営業電話がかかってきたり、あるいはアポ無しで事務所を訪問されるリスクを軽減することができます。

また、後日詳しく話を聞きたいと思った出展者に対しては、連絡を待つのではなく、こちらから連絡をしたほうが良いです。ブース担当者もたくさんの来場者と話しているので、忘れられてしまうことだってありますから。

繰り返しになりますが、国際物流総合展は、国内で行われる物流イベントとしては最大です。そのため、情報収集や、あるいは物流業界の最新動向をつかみたいと考えるのであれば、腹をくくって、しっかりと時間と手間をかける必要があるでしょう。

疲れますけど...、でもそれだけのリターンを得ることができる展示会です。
ちなみに筆者の場合は、よほどの急用がない限り、4日間、国際物流総合展に入り浸ります。

もし仮に、今まで足を運んだことがない物流関係者がいたら、ぜひ足を運んでください。 国際物流総合展、それだけの価値がありますから!

記事のライター

坂田 良平氏

坂田 良平   物流ジャーナリスト

Pavism代表。「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、執筆活動や、ITを活用した営業支援などを行っている。ビジネス+IT、Merkmal、LOGISTICS TODAY、東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなどのWebメディアや、企業のオウンドメディアなどで執筆活動を行う。TV・ラジオへの出演も行っている。

※本文中で使用した登録商標は各権利者に帰属します。

ピックアップ

車両入退管理サービス

FLOWVIS(フロービス)は、ETC車載器と車番の両方で車両を「確実に」識別できる車両入退管理サービスです。受付業務を自動化し、省力・省人化を実現。入退履歴や滞在時間も自動記録するなど、入退管理の効率化でコスト削減へとつなげます。

コラム一覧