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「地デジ放送局」とGPSタイミング技術

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地上デジタルテレビジョン放送局に活用されるフルノGPS

日本では、2011年7月にテレビのアナログ放送が終了し、デジタル放送へと完全移行されます。いわゆる地デジ放送では、極めて高い精度の送信周波数偏差を求められるため、そこにGPS衛星が持つ超高精度クロックを活用したシステム構築が不可欠となっています。従来のテレビ塔である東京タワーをはじめ、様々な放送所にてフルノGPS周波数発生器が装備されており、その実績と安定性が認められ、2012年春に開業予定の東京スカイツリーでも搭載されます。また、2012年からサービスを開始する、「モバイルマルチメディア放送網」においてもフルノGPSが貢献するなど、デジタル放送技術の先端を走る日本において地デジ放送網を陰から支えています。また、海外においても、その安定した技術が高く評価され、フルノのタイミング技術が各国で活用されています。

アナログ放送に比べてデジタル放送の特長は、受信する側から見ると、高画質・高音質・耐マルチパスと優れた面があります。放送する側から見ると、同じ周波数で電波を中継することができ、単一周波数ネットワーク(SFN)構築によって周波数有効利用に貢献しています。このSFNを実現するには、超高精度の基準発振器が必要であり、GPS制御による基準周波数発振器がなくてはならない役割を果たしています。

では、GPSの必要性について説明します。

1. アナログ放送と地デジ放送の周波数精度の違いについて

日本の放送業界が定める送信周波数の偏差(許容されるズレ量)は、アナログ放送では120Hz以内、地デジでは0.2Hzです。なんと600倍の精度要求です。アナログ放送では基準発振器にルビジウム原子発振器を使用しており、その周波数安定度は5E-10/年です。故に1年間のズレは最大0.385Hz(770MHz×5E-10)です。アナログ放送は120Hzのズレまで許容されていますので、周波数の校正は311年間(120Hz/0.385Hz)必要ありません。ところが地デジ放送で許容されるズレは0.2Hzですので、周波数の校正は0.51年(0.2Hz/0.385Hz)毎に必要になります。
故に、地デジではルビジウム原子発振器を使用しても6ヶ月毎に周波数の校正が必要となり、地デジ全送信局に対応することは現実的に不可能です。

2. 不可能を可能にするGPSについて

GPS衛星には超高確度のクロックが搭載され、その確度は地上局により維持されています。そのGPS衛星群から送られてくる電波を1衛星受信するだけで、GPS衛星が持つ超高確度のクロックを得ることができます。その得られる確度は長期に渡って1E-13です。1E-13/年として精度を時計に例えると、10兆年に1秒狂う精度です。
GPSによるこの周波数安定度を1E-13/年としても、地デジの許容されるズレ0.2Hzに対して周波数校正は2,597年間(0.2Hz/(770MHz×1E-13))不要になります。実際には年によるズレも発生しません。
故に、ルビジウム原子発振器でも不可能な精度をGPSは遥かに超えた精度で可能にします。

「番組中継用デジタル回線」の対象無線局イメージ

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