アメリカ人のギルバートさんは、出張で日本にやってきた時、とても貴重な機会に恵まれました。
それは、日本の有名大学で電力ネットワークイノベーションを研究している教授との会食でした。
これまでそれほど意識して考えたことのなかった電力ネットワークや電力供給の仕組み。教授から聞かされる最先端の研究はどれも興味深く、また驚くほどスマート化されていくことを知りました。
そこでギルバートさんは、「スマートグリッド」という耳慣れない言葉を聞きました。どのようなものか教授に質問したところ、「スマートグリッドは次世代送電網とも呼ばれており、供給元・供給先にある電力制御装置をネットワーク化して、それらを統合的に制御することで、電力供給のさらなる効率化を図るシステム」だと教えていただきました。
現在は太陽光など再生可能エネルギーでの自家発電が増えているため、スマートグリッドにおける電力制御の方向は、送電網から供給先への一方向だけでなく、自家発電で余った電力の活用としてその逆の方向も考慮する必要があるとのことでした。
さらに、制御する際には各所にある電力制御装置を、タイミングを合わせて動作させないと(バラバラに動作させると)電力が不安定になるため、電力ネットワーク内にある各電力制御装置が高精度に時刻同期していることが重要なようです。
「離れた場所にある電力装置どおしの時刻同期をどのように実現させるのか?」
ギルバートさんは疑問に思い教授からさらに話を伺うと、GNSS(GPS)を活用すればマイクロ秒・ナノ秒単位の精度で時刻同期が実現できるとのことでした。カーナビやスマートフォンでおなじみの、あのGNSS(GPS)です。
GNSS衛星にはとても精密な原子時計が搭載されており、GNSS受信機を使えば世界共通の絶対時刻である協定世界時(UTC)を高精度に取得できるとのことです。電力制御装置それぞれが協定世界時に合わせて動作することで時刻同期を実現し、安定した電力制御が実現できるようです。
電力とGNSS・・・意外な組み合わせに興味津々のギルバートさんに、教授はさらに続けました。「ただしGNSSだけに頼ると、何らかの理由、例えば妨害波や落雷によるGNSSアンテナの故障などでGNSS信号が受信できなくなった場合にシステムが破たんしてしまう。そうなった場合でも、復旧するまでの一定時間は高精度な時刻を出力し続けられる機能をもったGNSS受信機が、スマートグリッドのようなインフラシステムに必要だ」
その機能はホールドオーバ機能と呼ばれ、GNSS基準周波数発生器という機器に搭載されているとのことでした。
「今後、電力のインフラ設備で、ホールドオーバ機能を搭載したGNSS基準周波数発生器が拡がりそうだな」
ギルバートさんはそう思いながら、教授からスマートグリッドについてさらに詳しく話を伺うのでした。
ギルバートさんと教授の話に出てきたGNSS基準周波数発生器とは、GNSS測位により求まる正確な時刻でOCXOなどの発振器を制御して高確度かつ高精度なタイムパルス(1PPS)と基準周波数を出力する製品です。GPSDO(GPS Disciplined Oscillator)またはGNSSDO(GNSS Disciplined Oscillator)とも呼ばれます。
今日では、地上波デジタル放送の放送局や携帯電話の基地局といった社会インフラをはじめ、各種無線通信システムやグランドマスタークロックなど、正確な時刻・基準周波数や、タイミング同期を必要とするシステムに幅広く利用されています。
フルノのマルチGNSS基準周波数発生器も、上記さまざまな社会インフラ設備に採用いただいております。複数のGNSS(GPS/GLONASS/QZSS/SBAS)信号を同時受信することで、高精度なタイミング情報をより安定的に取得できます。また、GNSS信号が受信できなくなった場合にも高精度なタイミング情報を出力できるホールドオーバ機能では、タイムパルス確度1.5μs/24hourという世界最高クラスの性能を実現しました(GF-8805)。
サイズ、コスト、用途など、お客様に合わせた製品ラインナップを取り揃えております。
※GF-8801/GF-8802/GF-8803、GF-8804/GF-8805はピンコンパチブル&同一出力フォーマット。
用途に応じて載せ替えが可能です。