新潟大学の金ミンソク准教授(2022年3月取材時)は、屋外移動通信環境における電波伝搬測定を研究テーマに活動しています。総務省の研究開発プロジェクト(通称:国プロ)にも選ばれ、次世代のモバイル通信システムの開発にも貢献されています。
今回、研究中の6Gモバイル基地局とモバイル端末のフィールドテストにおいて、離れた2地点間でそれぞれUTCに同期した正確な1秒パルスが得られるフィールド・タイムシンク・ジェネレーター「TB-1」をご採用いただきました。
モバイル通信の研究では、モバイル基地局とモバイル端末を模擬した装置を、時刻同期させて評価する必要があります。ラボ環境においては、1台のルビジウム発振器の信号を分配してそれぞれの装置に入力し、同じ基準信号で同期させていました。
その後、実フィールドの屋外環境で評価するにあたり、"離れた2地点間"のモバイル基地局とモバイル端末を時刻同期させる方法を検討されました。
フィールド評価では2地点間の距離的に、1台のルビジウム発振器の信号を分配することができません。また、それぞれの地点に個別のルビジウム発振器を使うだけでは、ルビジウム発振器どうしが独立しているため必要な同期精度が得られません。
ルビジウム発振器よりも高精度なセシウム発振器も検討されましたが、高額かつ持ち運びが困難です。
そこで、離れた2地点間でも同じ時刻同期ソースが得られるフィールド・タイムシンク・ジェネレーター「TB-1」の採用に至りました。
実験室での時刻同期(基地局と端末の距離が近く、1台のルビジウム発振器の信号で同期)
屋外の離れた場所では、それぞれ個別のルビジウム発振器を用いた場合、ルビジウムどうしのタイミングずれが発生
モバイル基地局とモバイル端末に入力しているルビジウム発振器(FS725)を同期させるため、それぞれにリファレンス信号として、TB-1が出力する高精度な時刻ソース(UTCに同期した1秒パルス)を入力。これによりルビジウム発振器どうしを高精度に同期させられることを確認しました。
屋外の離れた場所でも、TB-1の時刻ソースを活用することでルビジウム発振器どうしが高精度に同期
実験室にてルビジウム発振器どうしの同期を確認(写真右:GNSSアンテナは窓に貼り付け)
実験室にてルビジウムどうしの同期を確認後、横浜関内駅周辺エリアでのフィールド評価を実施。実利用環境における電波伝搬特性の測定が可能になりました。
フィールド評価の様子
Beyond 5Gや自動走行、ドローン、IoT等の普及に伴い新たな無線システムの開発や展開を柔軟かつ迅速に行う必要があります。私は、仮想空間上で無線システムの通信方式・電波伝搬特性等を大規模かつ高精度で模擬し、リアルタイムで評価する電波模擬システムの実現に向けた、総務省 電波資源拡大のための研究開発「仮想空間における電波模擬システム技術の高度化に向けた研究開発 (2020-2023)(JPJ000254)」を行っています。このプロジェクトのなかで、仮想空間における電波模擬を行うためのシナリオ適用可能性に優れた電波伝搬モデルの研究開発を担当し、実利用環境における電波伝搬特性の測定及びチャネルモデリングを行っております。本研究開発では、実環境における電波伝搬特性のフィールド測定が大変重要で、伝搬チャネル測定の精度を担保するためには、送受信機における基準信号の正確な同期が必須です。今回TB-1を使用させていただき、非常に高精度な信号同期ができました。これにより、5G・Beyond 5Gの周波数として期待されているミリ波帯(24 GHz・60 GHz)において横浜関内駅周辺エリアでの測定が無事にできました。このような実験は世界的にも珍しく,測定データの解析結果は大変貴重な研究成果になると期待しています。技術的なアドバイスをしていただいたフルノ様に感謝致します。
お手持ちの測定器のリファレンス入力につなぐだけで、測定器の精度が大幅に向上します。
また、TB-1を各拠点での共通の時刻ソースとして使用すれば、拠点間の時刻同期も可能です。
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コンパクトで持ち運びでき、USBによる電源供給や起動後5分で使用可能になるなど、簡単・便利が特長です。